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吉田コム / YOSHIDA COM
ステートメント
私は幼少期をニュータウンという文化も歴史も無いただデザイナーが考えた、”街という舞台セット”の中で過ごした。ただただ平和な毎日が流れていくユートピックな閉ざされた世界の中で、その景色や自分自身に対して漠然とした現実感の無さがあった。そしてその違和感は、外の世界に出て色々な場所を訪れる中で肥大していった。
久々にその街へ訪れる事があったのだが、蘇る記憶も無く”空っぽ”だと感じた。
そして〈先人の築いた歴史が落とす”影”〉の無いその土地で、太陽が広大なコンクリートの地
面を照りつけ、眩しすぎる光に私は包まれて、どこかへ消えてしまった。
シャミッソーの『影をなくした男』では、金貨と引き換えに”影”を売ってしまった主人公が人間として扱われなくなった世界を描き、J.M.バリーの『ピータパン』ではウェンディが、ポキンと折れてしまった”影”をピーターパンの足に縫いつけてあげていた。
しかし私にとって”影”は失ったという話では無く、”影の無い街”こそが原風景である。
縫い付ける”影”の無い私は作品を通してこの世界を観測し、ここでは無いどこかに自分の”影”
を探し求めている。
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