高橋綾音 / Takahashi Ayane
ステートメント
私の作品は寓話的に現代を捉えた世界を表現しています。一見ユーモラスな作品に現代の問題を内包しています私の地元は宮城県でなのですが、大震災の経験から被害など、事実の強さを知ると同時にそのものが持つ攻撃性や受け入れがたさを感じました。そこで事実や社会問題を独自の世界のフィルターを通してコミカルに見せることで、いろんな人にも受け入れやすく攻撃的ではない形で伝えたり考えさせることができるのではないかというテーマで活動しています。
今回の作品単体としてのコンセプトは自己との乖離です。世界にはコロナが広がり、今まで通りの生活ができない状態になりました。私自身も、大学を卒業し社会人とならなければなりません。これからの世界を生きていくために、今までの自己との乖離を目指す作品を作ることにしました。今の私が持つこれからに対する不安や願望が自己の存在が変化に対する阻害をおこなってしまうと考えています。
そこで自己の乖離をする際に考え方として共感したものが、浄土教でした。浄土教が目指す、自己の立場から遠い存在の願いを元に生きることは、私が自己を乖離させることによって生きていこうとしていることにとても近いと感じました。そうして浄土教が流行った経緯を調べていくと、ここ10 年に起こった大地震、噴火、伝染病の流行という出来事が浄土教が広がる前の平安にもあったことを知りました。今、私が浄土教にシンパシーを感じるのは過去の平安時代の人とのつながりなのかもしれません。私が行いたいのは現世の「平穏」を願い、自己の乖離を行うことです。そのため人種や国を超えた動物の集合体によって表現することを考えました。釈迦の前世である動物たちを元にするのは動物の姿で徳を積み何度も転生して釈迦になったように、動物一つ一つにも修行的な意図を持たせています。
今回は卒展に向けたそんな作品の中から何匹かの動物を出させていただきます。